インスペクション(住宅検査)
インスペクションについて
はじめに
インスペクションとは、いわば住宅の「健康診断」で、構造の問題は起きていないか、雨漏り、蟻害、その他メンテナンスの必要性はないかを、国が定めた項目についてチェックし報告するものです。(正式名称は「既存住宅状況調査」・「建物の構造耐力上主要な部分等の状況調査」)また、チェックし報告する者は、基本的に建築士で所定の講習を受講し、建築士事務所に所属する者に限られ、その報告書には一定の公的効力のある書類ということになります。
この制度は元々は欧米で広まった制度で、中古住宅取引において、購入者側が第三者の専門家に、購入を検討する住宅についての調査をしてもらい診断書を得るための制度です。今ではこの診断をつけるのが常識になっているそうです。日本でも2018年4月から、中古住宅取引の際にインスペクションの説明が義務化され、一気に広まるかと思われたのですが、実際のところは、まだ売り手側としては値を下げるかもしれないことは、できれば実施したくないということもあって、ほとんど普及していないというのが実情です。
インスペクションでどんなことをするか
インスペクションは通常の1戸建でしたら3時間程度かけて、作業着と確認用の道具類を持ってお住まいを回らせて頂きます。
例えば、基礎ですと、クラック、ひび、鉄筋の露出、白華といって白い筋が出ていないか等。床下は点検口から覗いて蟻害の形跡、湿潤がないか、床下構造材のずれや割れがないか。同様に屋根、外壁、屋根裏等も確認します。各項目ごとに細かく確認するポイントが規定されていて、劣化の程度も段階的に選択する形式になっています。これらの調査結果をまとめた報告書はA4で17ページの報告書にまとめます。あとは、定形外ですが分かりやすいように図面に劣化箇所と内容を書き込んでご覧いただくようにしています。
インスペクションの基本的なメリット
中古住宅取引におけるインスペクションも有意義なことなので、是非普及していって欲しいところですが、それ以外にもお勧めしたいインスペクションの活用法があります。
①自宅のメンテナンス・リフォームの為の調査
住宅は10年を過ぎたあたりからメンテナンスが必要と言われるのは認識しながら、具体的にいつ頃何をしたらいいのか分からないという方も多いと思います。インスペクションを受けることで、実は床下の湿気が多く腐朽やシロアリの懸念があることや、バルコニーの防水の劣化が見つかるようなこともあります。まずインスペクションを受けることで、住まいの弱点を見つけ出し、合理的にメンテナンス計画を立てることが出来ます。
②リフォームの補助金の為
「長期優良」補助金(正式名「長期優良住宅化リフォーム推進事業補助金」)というものがあります。規模の大きなリフォームで補助金と言えばこの制度が筆頭という制度なのですが、この補助金はインスペクションが条件となっています。実は私達がインスペクションを実施するケースのほとんどが、この補助金を申請するためです。「長期優良」補助金は、インスペクションが絶対条件で、そのインスペクションにより判明した劣化部分の修繕、建物の一定の耐震性、省エネリフォーム、3世代同居リフォームなどの諸条件の組み合わせが必要となっています。例えばすべての窓を断熱化し、外壁塗装、屋根塗装、浴槽の取替などが補助対象で80万円程の補助金が降ります。(インスペクション費用についても1/3が補助されます)。リフォームの補助金としては最大の補助額を得られるので大変お薦めです。
※長期優良以外にもインスペクションが要件となっている補助金があります。
③築20年超の住宅で、中古住宅の住宅ローン控除を申請する為
中古住宅を購入される予定の方には、是非覚えて頂きたいのがこの仕組みです。
住宅ローン控除とは、住宅購入費用を借入されていて申請すると、毎年残債の1%程度が10年間(現在は13年間)戻ってくるという制度です。2000万円以上借りられる場合も珍しくないですので、計算すると200万円から400万円もの減税になります。
この住宅ローン控除を中古住宅を購入するときの要件は
【 1 】鉄骨築25年以内・木造築20年以内
【2-A】上記以外(1981年より新しい):住宅瑕疵保険の加入。
【2-B】上記以外(1981年より古い):住宅瑕疵保険の加入。or 耐震基準適合証明書。
上記の【1】の場合はインスペクションは必要ないのですが、【2-A】、【2-B】の住宅瑕疵保険の加入の要件が、インスペクションとその指摘事項の修繕となっているのです。(但し、インスペクションは不動産売買契約前である必要があるので、注意が必要です)
インスペクション費用と仮に外壁と屋根の補修で200万円かかったとしても、いずれは修繕しないといけない工事費用が、節税分で出来るとなればかなりお得な話です。しかも瑕疵保険もついてくるのですから、利用しない手はないと思います。
2-Bは、少々物件の状態によって話が変わってきます。1981年から新耐震基準が適用されており、それより新しい建物についてはインスペクションを行って住宅瑕疵保険を活用することをお薦めするのですが(2-A)、1981年よりも古い建物の場合は、耐震診断をして、その結果補強をしないといけない場合がほとんどです。その補強費用が100万円を超える場合も珍しくありません。ただその中古住宅を大変気に入っていて買う事が決定なのであれば、耐震診断と耐震補強工事を実施します。あとは、インスペクションを実施すると瑕疵保険に入って条件をクリアしますが、もう一つ、インスペクションは実施せずに、耐震基準適合証明書を取得することでも、住宅ローン控除を受けることができます。少額でも節約されるか、安心のために瑕疵保険をつけるためにインスペクションを受けるかの判断だと思います。ですが、どちらかというと、一度インスペクションを受けることで、基本的な建物の修繕計画を検討できるようになるので、今回は耐震補強を実施したが、あと何年かで屋根をメンテナンスしないといけないなど、今後のためにもインスペクションを受けて瑕疵保険を付けられることをお薦めします。
④自宅の売却の為
住宅を手放すようになったときに、特に戸建の場合はなかなか売れないという状況があります。そんな中でインスペクションを行い、瑕疵保険がつけれる状態にまで修繕を済ませておくことで、購入者側から見て住宅ローン控除や瑕疵保険がつけられる物件であることは大きな魅力となるはずです。
⑤中古住宅購入の為
最後になりましたが、やはり本来の中古住宅購入前のインスペクションを実施することは、一番普及してほしいインスペクションの在り方です。中古住宅の取引の際は立地や間取り、面積などの評価が大きく影響している一方、専門家でないと分からない構造の良し悪しや内部の状態については、十分に購入者に伝えられているとは言えません。住んでみて1年で雨漏れがしたとか、実は断熱がすごく弱くて居心地が悪かったなどはよくある話です。私たちが修繕でお伺いしたときに、その時にインスペクションを任せてもらっていれば購入時に解決できていたはずなのに、と思う事もあります。さらに、場合によっては、住宅ローン控除、瑕疵保険もついていたこともあります。
是非中古住宅をご購入の前には私達を思い出していただきご相談ください。また各種補助金、基本的な建物調査としてもご活用頂けると幸いです。
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