空き家、空き地問題解決への取り組み
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根深い空き家、空き地問題
理事の高橋です。昨日、noteなるサイトで丹波竜の里、丹波市の山南町という山あいの村落で現在行っている空き家(というより廃屋)の解体工事にまつわる地主さんとのトラブルについて書きました→こちら。謝罪とご説明に伺って、地主のお婆さんといろいろと話をする中で、ごく自然な流れで建物を取り壊した後の土地をどうするか?との話題になりました。その地主さんは立派な田舎家にお住まいで、家の周りにも広大な田んぼや畑を持っておられ、自分一人では作物を作ることさえままならなくなり、今は休耕地になってしまっている土地も多いとのことで、解体工事を行っている土地については全く何も利用する計画はないとの事でした。
そういえば、と少し前から田舎暮らしをしたいと相談を受けていることを思い出して、欲しい人がおられたら売却されますか?と訊ねてみたところ、その土地以外にも駅前の便利な宅地など、二束三文でどれでも売ってあげるとのこと。多分、80歳は優に過ぎておられるお婆さんは「先代からの相続で私一人で田畑、家屋を引き受けてしまい、どうしたもんか困っている。」と嘆かれていました。空き家対策プロジェクトでの活動をしている私としては、最近増えてきた田舎暮らし志向の方となんとかマッチングして山あいの集落の過疎化を食い止めるのに一役買いたいと強く思った次第です。
空き家、空き地対策の現状
丹波のような山深い集落だけではなく、神戸市内でも同じような空き家の老朽化問題は散見されるようになり、街中で明らかに長年空き家のまま放置されている家を頻繁に見かけます。神戸市でも空き家対策の取り組みは行っておりますし、市のHPでは解決すべき喫緊の課題だと強い意気込みの文章が書かれています。
神戸市の空き家等対策計画はこちら:
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/39643/r2_taisakukeikaku_an.pdf
市町村が行う空き家対策は基本的に残す価値のない建物は解体し、活用する人に売却もしくは譲渡、建物を利活用するのなら建築基準法に適合する強度を担保して地震災害への備えを万全にしたい。となっており、そのために解体費、譲渡の際の取得税の免除、隣地取得の際の補助金、耐震補強工事に対する補助金と基本方針に従って、予算の配分をしっかりとされています。しかし、残念ながら街中の空き家問題の解決が順調に進んでいるかと言うと決してそんなことはなく、どちらかと言うとせっかくの補助金などの予算もあまり活用されていないのが現実です。
空き家対策プロジェクトチームXの取り組み
そのような現状を受けて、朝活BNIで私と一緒に活動している志高き遠藤弁護士が、なかなか進まない空き家対策に解決の道筋をつけるのに関係する専門家が結集して民間の力でなんとかできないか、と立ち上がったのが空き家対策プロジェクトチームXです。当NPO法人でもタイアップして共に活動を始めています。私もその立ち上げメンバーとして活動をしている訳ですが、昨年末から具体的な案件に数多く取り組む中で、空き家対策が進まない原因とその解決する道筋がなんとなく見えてきました。私の気づきと解決へのスキームは多分、日本全国どこにでも当てはまり、取り組んで貰えれば確実に成果につながり、地域のリスクを排除し、美しい街並みを作り、地域の活性化に資することができると思いますので、このコラムで具体的な方法論を書いておきたいと思います。地域再生、活性化、持続可能な循環型社会の構築を目指されている方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
まず、空き家問題の解決が進まない最も大きな問題を整理しておきます。当然のことですが、空き家になる建物は相続する価値がない、相続する人がいない、そして、相続した人がわからないが故に老朽化して周囲に危険を及ぼし、街の景観を害してしまっています。先述した丹波の集落の空き地などでは土地の価値がほぼ無いに等しいので、そこに住みたいと言われる人を見つけて、市町村から出されている解体費用の補助を受けて譲渡するくらいしか対処の方法はありませんが、神戸市内などの街中ですと土地に価値があることが多く売却益で建物の解体を行う事ができるはず、となります。にも関わらず、空き家対策が進まないのは、所有者がわからない(もしくは相続人がいない)、相続された地権者が多く所有権が複雑になっている、相続したことは認識しているが、どう処分したら良いかわからない。といった理由が主な理由です。
空き家問題解決の障害
最も厄介な、老朽化が進む空き家の相続人がわからない、もしくは既に所有者が存在するかも不明な物件を建物を取り壊して、土地を利活用するにはまず、所有者を探し出す必要があります。基本的には戸籍謄本から追跡するのですが、これは司法書士や弁護士、行政書士といった法律家にお願いする必要があります。所有者が見つかれば、取り壊し費用や建物を売却した時の価格を提示するなどして進めれば良いですが、相続人がいないなど所有者が不明な場合は隣保に住まれており、建物の老朽化で被害を被る利害関係者が弁護士を通して裁判所に申し立てして、管財人を指定する事ができます。その管財人が土地の売却額を把握した上で建物を解体し戸籍調査や裁判所への申し立てなどの費用をまかない、売却益が余った場合は国庫に寄付すると言うことが可能になっています。
ここで問題は、戸籍調査から裁判所での手続き、解体工事、土地の媒介手数料まで最低でも200万円〜300万円程度の費用が発生し、申し立てする利害関係がその費用を立て替える必要がある事です。士業の専門家に調査依頼をする段階ではいつ土地が売却出来るかもわからない状態で、人様の土地を綺麗にするのにそんな費用を立て替える人はおりませんし、市町村などの自治体でも個人の土地にそのような出資を行うことは出来ません。要するに、問題解決のルートはあるのに、事業の全体像、出口が明確になっていないため、誰もそれに取り掛かろうとしないのが今の現状です。
ワンストップのプロジェクトスキーム
私からの提案は、空き家対策プロジェクトチームXのメンバー(弁護士、司法書士、建築士、宅建士、税理士、建築会社、廃材処分、等々)で案件の初めから終わりまでのストーリーを描いて、かかる経費、解体費、仲介手数料を初めに明らかにして解体後の土地の引受手まで事業計画を固めてから不動産売却益との整合性を確かめて事業に取り掛かってはどうかと言うことです。最終的な着地が見えていれば、先行投資するリスクは限りなく低くなりますし、初めはメンバーで基金を募って、いくつかの事業で不動産売却益が出てばそれを基金に充当して、次々とプロジェクトを進めていく事ができるのでは無いかと考えています。
もちろん、実際の業務に携わる人にはボランティアではなく正当な報酬を支払いますし、誰も手をつけられなかった空き家、空き地を再生する事は街並みを美しく保ち、地域活性化に結び付くと思います。地域が良くなればそこに住まう人の暮らしは当然良くなるのは自明の理、まずは経費をまかなえる程度の不動産価値のある空き家、空き地の情報を集めるところからスタートすれば、基金が形成されて順番に問題解決へ進むと思います。たまたま、神戸では街を良くしたい、綺麗な街を次世代に引き継ぎたいとの熱い想いを持った専門家が多く集まるチームができましたが、同じ想いがあれば日本中、どこでも再現可能なスキームにできるのでは無いかと思うのです。
ご意見、情報お待ちしています!
とはいえ、まだまだ構想を始めたところなので、今後、様々な問題が出てくるとは思います。土地、建物の問題は常に個別の問題で、それぞれ複雑に条件が違います。大事なことは、まず一歩、一つずつの案件に向き合い、解決の糸口を業種、専門ごとに切り分けて考えるのではなくワンストップで対応する機関を作ることでは無いかと思います。多くの志の高いプロフェッショナルと力を合わせれば、解決困難、複雑怪奇な空き家、空き土地問題もなんとか解決の糸口が見えるのでは無いかと思っています。現在はまだ、思いつきベースの荒削りなスキームではありますが、地域を良くしたいとの想いは強く、なんとか四方皆が良くなるスキームを具現化したいと思っています。相続した家屋が空き家になっている、近隣で空き家の老朽化が問題になっているといった方は当NPO法人の既存住宅流通活性化部会にお問い合わせ頂ければと思います。神戸、兵庫の街を美しく保つ取り組み、チーム一丸となって関わらせていただきます。